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谷津地域の住居表示の陳情-「奏の杜」採決強行

29日の6月議会最終日は、午前9時30分から議会運営委員会。本会議は午前10時に始まり、午後5時10分頃まで紛糾しました。

谷津地域の住居表示変更に関する陳情23件について、総務常任委員会は継続審査としましたが、本会議では、開発側の要求に従った名称・境界を早く決めようとする議員が継続審査を否決。委員会再開を求める動議も否決され、採決が強行されました。

総務常任委員会での質疑・要望等を報告する「委員長報告」も、陳情の是非に関する討論もないまま、15名の議員の賛成で、区画整理組合理事長の提出した陳情(「奏の杜」に変更)が採択されました。

私は、陳情23件の継続審査の賛成討論をしました。私の討論が波紋を呼びましたが、過去の事例(2000年3月議会、2007年3月議会)を参考に討論しました。少し長いですが、討論全文を掲載します。

谷津小学校側からみた谷津1丁目西側(バス通り右側)
谷津地域の住居表示の陳情-「奏の杜」採決強行_c0236527_13105211.jpg





〔住居表示の陳情の継続審査の討論〕
JR津田沼駅南口特定土地区画整理事業にともなう住居表示変更に関する陳情23件の継続審査に一括して賛成の討論をします。

これらの陳情のうち、地元町会から出された約2千人の陳情は、市の原案と住居表示審議会の答申に基づくものであり、問題ありません。そのほかの陳情については、表現方法は様々ありますが、基本的な願意は、現在の住居表示に基づく決定を求めるものですから、特に問題ありません。

市議会として判断が問われるのは、区画整理組合理事長などから出された陳情第1211号です。これは、住居表示法に基づき、慎重に検討された市の原案と住居表示審議会の答申に真っ向から反対するものであり、慎重な対応が必要です。仮に、本日採決をとるなら、住居表示法の規定から考えて、到底賛成できる陳情ではありません。

ここで、市議会議員として判断する際、注意しなければならないのは、住居表示の町の名称や境界の決定は、市議会議員の人気投票で決めるものではないということです。

住居表示法第3条では、「議会の議決」が規定されていますが、このほかの条文や関係規則、実施基準では、細かく住居表示のルールが定められています。市議会に求められるのは、法令、関係規則、実施基準に則しているかどうかの判断であり、議員の好みや支持者から頼まれたからということで決めるものではありません。

なぜなら、住居表示をめぐって、昭和37年に住居表示法が施行されて以来、全国各地で町の名称や境界をめぐる紛争が多発しました。多数の訴訟も起こりました。これに対し、国会では超党派で法令の見直しが検討され、何回にもわたって法令、関係規則、実施基準が改定に改定を重ねられ、現在のルールが整備されてきました。

名称や境界をめぐって、住民の間で意見の食い違いがある場合は特に、この長年にわたってつくられてきたルールに厳密に従って住居表示を実施しないと、紛争が拡大することになります。習志野市でも、今後の紛争を避けるためには、住居表示法や実施基準に厳密に従った決定をする必要があります。

今回、法的に最大の問題となるのは、町・丁目の境界設定です。組合理事長が求める境界の設定、すなわち陳情書にある「エリアマネージメント対象区域=住居表示とする必要性」の主張は、住居表示法や実施基準では到底認められるものではありません。だからこそ、昨年11月に示された市の原案でも、今年2月に出された住居表示審議会の答申でも、採用できなかったのです。

今回の総務常任委員会では、「境界の入り組みについて整理すること」を求める意見が複数の委員から出されました。しかし、組合理事長が要求する境界の複雑な入り組みの問題は、昨年11月の第1回住居表示審議会ですでに指摘されてきたことで、毎回会議で問題となりました。それにもかかわらず、組合理事長は、この複雑な境界設定を求める要望書を今年2月に市長に提出しました。その後、住居表示審議会で慎重審議のうえ、答申を出したにもかかわらず、それに真っ向から対決する議会陳情を4月に提出しました。

これまでの経緯から考えて、現時点で出されている陳情書からは、複雑な境界設定の整理をする意志は、まったく読み取れません。法的に無理があっても、知り合いの市議会議員に頼めば何とかなるという計算しか読み取れません。

仮に、この陳情を市議会が追認してしまえば、わざわざわかりにくい住居表示に変更するという全国で初めての事例となります。組合理事長は「日々の生活にご迷惑をおかけするものではない」と陳情書に書いていますが、谷津1丁目、6丁目、7丁目の隣接住民は、わかりにくい住居表示を押しつけられ、利便性の低下を強いられることになります。

仮に、多少の境界変更を組合理事長が認めたとしても、現在はバス通りできれいに分かれている谷津1丁目西側のまっすぐの境界を東側に大きく湾曲させるように変更することに変わりはありません。これでは、JR津田沼駅から谷津小学校方面に向かった場合、初めは、左手に谷津1丁目、右手に谷津7丁目、途中から「奏の杜」となり、またしばらく行くと左手に谷津1丁目、右手に谷津5丁目があらわれるという、極めて奇妙な住居表示となります。これでは、土地勘のない方は戸惑ってしまいます。

陳情第1211号で求めている住居表示の変更は、習志野市はもちろん、全国的にも例のないやり方です。今回の陳情について、谷津以外の地域に住んでいる議員のなかには、「よその地域の話」とみている方もいらっしゃるかも知れませんが、仮にこのやり方が認められ、前例となれば、習志野市の他の地域においても、開発事業者や地主が同様の要望を出してきたとき、認めざるをえなくなります。

そういった意味で、今回の陳情審議は、習志野市の住居表示の今後に多大な影響を与えるものであり、慎重な対応が必要です。現地調査や住民の意向調査、境界や名称の変更の関係者の参考人質疑などやりもせず、採決を強行することは無謀です。

法的に第二の問題となるのは、住居表示法第2条第2項に規定された「従来の名称」の解釈です。すでに昭和52年から「谷津」という名称で住居表示がされている地域であり、それを変更するには、かなりの理由付けが必要です。区画整理組合が2年前に考え出した愛称を、いきなり住居表示の名称として使用するのは極めて困難です。

陳情第1211号は、「奏の杜」をもって「従来の名称」としていますが、現在の「谷津」を希望する2千人の陳情をみると、区域内の住民や地権者も入っており、住居表示を「奏の杜」に変更するのが地域住民の総意とはみなせません。区域内には、すでに事業認可を得ている「谷津近隣公園」もできることになり、現在の住居表示の名称を変えてしまうと、同一地域に複数の名称が混在することになります。また、区域内にある第一中学校は、谷津地域の住民の誇りであり、この生徒や保護者、関係住民の意向も大切にすべきです。

このようななか、多くの住民が名称変更を望んでいない以上、現状維持を原則とすべきです。たとえば、千葉市美浜区の「幕張ベイタウン」では、住居表示の名称と、愛称としてのタウンネームが共存しており、何の問題もありません。このような発展的な解決方法も模索すべきではないでしょうか。

繰り返しとなりますが、住居表示法、関係規則、実施基準に従った住居表示の境界や名称しか、現時点での解決策はないのです。仮に境界や名称で調整可能と考える議員がいるのであれば、9月議会までに慎重に再検討すればよいのです。

旧自治省・総務省は、住居表示の議案について、「地方自治法第7条及び第260条の議決とは異なり、議会においても修正権はあるものと解する」との見解を発表しています。(9月議会で)仮に市長提案の議案と異なる結論に市議会が達したのであれば、議会で修正提案できるのに、なぜ継続審査(慎重審議)に反対する議員がいるのか、理解に苦しみます。

いま、住居表示法をねじ曲げ、議員の好みとか、自らの支持者の好みという政治的判断を優先し、わかりにくい住居表示を住民に強いる採決を強行すれば、長期的な紛争へと拡大するだけです。好みの名称や境界にさえなれば、住居表示のルールはどうなってもよいという、無責任な選択を市議会議員としてすべきではありません。

以上、指摘し、(継続審査の)賛成討論とします。
by takashi_tanioka | 2012-06-29 23:59 | 住居表示 | Comments(0)

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