谷岡隆(たにおかたかし) 習志野市議会議員

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自治体版の「自己責任」論-東洋大学PPP研究センター提唱のまちづくりを考える

c0236527_024539.jpg党習志野市委員会の検討会議で、全国初の公共施設再生計画や公共施設再生基本条例について調査・分析を進めています。3日も会議で意見交換をしました。

社会資本の老朽化対策は重要な課題であり、それを真剣に考えている市民、市職員、専門家等の意見・研究から学びながら、日本共産党としても政策提言をしなければならないと思います。

公共施設の再生(習志野市役所HP)

カテゴリ「公共施設再生」(過去の記事)

問題は、習志野市の計画推進に大きな影響を与えている東洋大学大学院公民連携専攻、PPP研究センターの「公共施設マネジメント手法」です。全国的に宣伝されていますが、その根本にある思想は「美辞麗句」で隠されています。

この間の党内の会議、市議会の一般質問で指摘したことをまとめ直してみました。

1.社会資本の老朽化対策は、地方自治体の自己責任か?

(1)財界のビジネスチャンス-国土強靭化・都市再生の大型開発は聖域扱い

PPPによる「公共施設マネジメント手法」を提唱する人々は、老朽化した施設の更新投資を強調しながらも、大型開発を復活・推進させる国土強靭化、人口減少・需要減少を無視したリニア新幹線、東京オリンピックを口実にした新国立競技場の新築東京外環道の建設などには無批判であり、膨大な新規投資を認めています。

「企業の『稼ぐ力』の向上」を掲げるアベノミクスの成長戦略は推進の立場。従来から、ゼネコン主導の「都市再生」による無秩序な開発には無批判であり、住環境を大切にするまちづくりよりも、「稼ぐ力」を重視する傾向にあります。

c0236527_13482716.jpg東洋大学PPP研究センター長である根本祐二教授は、習志野市経営改革懇話会の会長を務めてきましたが、地方自治体の施設老朽化に対する国の責任(財源の配分など)は追求せず、ゼネコン主導のJR津田沼駅南口開発への財政投入にも無批判でした。

そもそも、大手不動産・建設業界主導の日本プロジェクト産業協議会(JAPIC)、日本創生委員会と密接な関係にあり、建設業界に政治献金の請求書を送りつけた国民政治協会(自民党の政治資金団体)の会長(塩川正十郎)が東洋大学総長を務めています。

社会資本整備の点からみると、大手不動産・建設業界の利益、それらを支持基盤とする自民党政権の利益が守られるようにパイ(予算)を切り分けておき、残されたパイで地方の施設更新を何とかしようというやり方です。

公共施設再生と「国土強靭化」-公共事業ばらまき、利権政治(2013年7月)

大型開発の“膨張”-またバラマキを繰り返すのか(日本共産党HP)

「骨太」と成長戦略-破綻したアベノミクスは中止を(日本共産党HP)

(2)「国を頼るな」の背後にあるもの-聖域を保持しつつ、老朽化対策は自治体の自己責任へ

国の「財政難」が強調されるなか、大企業・資産家のビジネスチャンスを守る政策は維持・拡大しながら、社会資本老朽化や福祉・教育の財源不足は、地方自治体が自分で解決しろという方向へ誘導しています。私はここに最大の問題があると考えます。

結局、東洋大学PPP研究センター(塩川・根本グループ)の発想は、「国を頼るな」「各自治体で解決しろ」という「自治体版の自己責任」論へつながっていきます。

「公共施設マネジメント手法」「3階層マネジメント=不動産有効活用」「シティ・マネジメント」は、地方自治体の「自己責任」による問題解決のための手法と言えるでしょう。

2.東洋大学PPP研究センターが美化する「サンディ・スプリングス」の実態-新自由主義(ネオリベ)のまちづくり

(1)クローズアップ現代「“独立”する富裕層」の衝撃

東洋大学PPP研究センターのまちづくりの思想が端的に表われたのが、彼らが美化するアメリカの新しい自治体経営です。

NHK「クローズアップ現代」で、「“独立”する富裕層~アメリカ 深まる社会の分断~」という番組が2014年4月22日に放送され、反響が広がりました。

貧富の格差による社会の分断が進むアメリカで、富裕層が自治体のあり方を変えようとしているという内容でした。

富裕層は、税金が貧困層のためばかりに使われていると反発し、富裕層が住む地区だけを周囲と切り離し、新たな自治体をつくる動きを強めているそうです。

この富裕層の動きを後押ししたのが、ジョージア州のサンディ・スプリングス市の誕生です。番組でコメンテーターを務めたジャーナリストの堤未果さんは、著書「(株)貧困大国アメリカ」で次のように述べています。

〔抜粋〕
民営化された夢の町。2005年12月。人口10万人、全米初の「完全民間経営自治体サンディ・スプリングス」が誕生する。


政府ではなく民間企業が運営する自治体。PPPと呼ばれるこの新しい手法は、アトランタ周辺の富裕層の間で爆発的な人気を呼んだ。

雇われ市長1人、議員7人、市職員7人。余分な税金を低所得層の福祉その他に取られずに、最も効率よく自分たちのためだけに使えるのだ。
(中略)
警察と消防以外のサービスはすべて民間に委託し、払った費用に見合った適切なサービスを受けられる。
(中略)
政府統治機能を株式会社に委託するというサンディ・スプリングスの誕生は、小さな政府を望む富裕層の住民と大企業にとって、まさに待ち望んでいたことの実現だった。
(中略)
サンディ・スプリングスが象徴するものは、株主至上主義が拡大する市場社会における、商品化した自治体の姿に他ならない。そこで重視されるのは、効率とコストパフォーマンスによる質の高いサービスだ。そこにはもはや「公共」という概念は、存在しない。

サンディ・スプリングス市のような株式会社経営の自治体では、富裕層は欲しいサービスをお金で買えるので、公立学校や公立病院、公共交通、福祉行政などに市が責任を持たなくなり、貧困層は生活できなくなると、堤さんは指摘しています。

c0236527_1531267.jpg「クローズアップ現代」では、民間企業による地域経営を発案した住民グループの代表オリバー・ポーター氏がインタビューに対し、「政府による所得の再分配には反対です。人のお金を盗む行為だと思います。」と答えています。

「所得再分配」は、一般的な財政学の教科書には「財政の三大機能」の一つとして明記されています。オリバー・ポーター氏は、これを頭から否定しており、まさに新自由主義経済(ネオリベ)の権化のような人です。

番組の内容は、下記HPに詳しく掲載されています。一見の価値あり。なかなか衝撃的な内容です。

クローズアップ現代「“独立”する富裕層~アメリカ 深まる社会の分断~」(NHKオンライン)

オリバー・ポーター氏の著書「自治体を民間が運営する都市~米国サンディ・スプリングスの衝撃」を日本語に翻訳して出版したのが、東洋大学PPP研究センターでした。監修は、根本祐二教授とサム田渕教授となっています。

サンディ・スプリングス市の誕生の翌年、「PPPのプロを育成する」ために、塩川正十郎総長によって東洋大学大学院公民連携専攻が開設されました。

2008年には、オリバー・ポーター氏や、サンディ・スプリングス市の運営を引き受けた大手建設会社の重役、シティ・マネージャーなどをゲストにしたシンポジウムやセミナーを東洋大学で開催。その翌年にPPP研究センターが設立され、オリバー・ポーター氏の著書も刊行されました。

オリバー・ポーター著、東洋大学PPP研究センター監修「自治体を民間が運営する都市~米国サンディ・スプリングスの衝撃」(東洋大学HP)

シンポジウム「サンディ・スプリングスの衝撃-完全PPP都市の出現-」(2008年2月)の開催報告(東洋大学HP)

シンポジウム「サンディ・スプリングスの衝撃-完全PPP都市の出現-」(2008年2月)の開催記録(東洋大学HP)

公民連携トップセミナー(2008年11月)の開催報告(東洋大学HP)

公民連携トップセミナー(2008年11月)の開催記録(東洋大学HP)

サンディ・スプリングス市視察レポート(東洋大学HP)

(2)福祉・教育部門のない行政組織-サービスは金で買う「夢の町」と、切り捨てられる人・地域

オリバー・ポーター氏の著書の帯には、東洋大学総長であり、国民政治協会会長でもある塩川正十郎氏が次のように書いています。

地方分権が叫ばれる今、民間企業に市の運営を託す驚きの方法とは? 民間活力を活用して、自治体の未来を切り拓こう。

構造改革路線を推進した塩川正十郎氏は、サンディ・スプリングス市を美化し、その手法を日本にも導入しようと躍起になっています。根本祐二教授も、上記セミナーで「日本でも完全PPP都市は可能」と述べ、その手法の一つとして「公共施設マネジメント手法」を全国で宣伝しています。

しかし、彼らは、自らが美化するサンディ・スプリングス市の行政組織には、公教育や福祉を担当する部署がないことは明らかにしません。「所得再分配」に関連する行政部門は切り捨てられています(州・郡にお任せ)。

そして、富裕層の「所得再分配」を拒否された他の地域は、「それなりの生活で我慢しなさい」というまちづくりへ追い込まれていきます。

様々なサービスを金で買える1%の富裕層が他の99%を切り捨てるまち、言うなれば、「新自由主義のまちづくり」が、彼らの思想の根幹にあることを明らかにしなければなりません。

3.日本における新自由主義路線の表出-地方自治体の「自己責任」「選択と集中」など

日本では、アメリカのように「所得再分配」を敵視する富裕層だけの自治体をつくることは困難でしょう。

しかし、大企業・資産家に応分の負担を求める「所得再分配」を否定し、彼らの利潤追求を満たす大型開発や都市再生などには財政投入(選択と集中)をしながら、地方の施設老朽化や福祉・教育施策には財源をまわさない(=自己責任でやれ)というやり方は、発想を同じくするものです。
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「資本が集中する大都市圏は、大企業・資産家の要求を満たす事業を進めなさい」
「大都市以外の地方の福祉・教育施策や施設整備には財源はまわさない」
「国を頼るな、自己責任でやるのが当然。金がなければ統廃合・資産売却と民営化しかない」
・・・ これが新自由主義・構造改革路線を歩む塩川・根本グループによる「公共施設マネジメント手法」「3階層マネジメント」の根底にあるまちづくりの思想ではないでしょうか。

4.真に豊かな社会とは?-共生のまちづくりへ

「儲ける人はどんどん儲けなさい」「そうでない人・地域はそれなりの生活で我慢しなさい」というようなやり方が、真に豊かな社会を産み出すでしょうか。

大企業・資産家の目先の利潤追求を守るのではなく、格差と貧困を是正し、共に豊かな社会を産み出すまちづくりこそ追求すべきではないでしょうか。先進国の中でも異常に急激な「人口減少」が予想されているからこそ必要です。

そして、中山徹さん(奈良女子大学教授)が下記研修会の案内に書いているように「自治体の努力で対応可能なことと、国の制度を変えなければ実現困難なことがあることを理解すること」が重要だと思います。

「国を頼るな」「再分配は反対」「自己責任」では、多くの地方自治体が施設統廃合・跡地売却、公共サービスの民営化(私有化)へ追い込まれていきます。

この夏、公共施設など社会資本老朽化の対策について、地方議員を対象にした様々な研修会が開催されます。習志野市の「経営改革」「公共施設再生」をアドバイスした東洋大学の研究グループ(根本祐二教授、南学教授)による連続講座もあるようです。

建設政策研究所関西支所自治体問題研究所多摩住民自治研究所による研修会も立て続けに開催されます。私も参加して考えを深め、習志野市政に活かしたいと思います。

地方議員研修会「人口減少のなかで活力あるまちづくりを考える」(建設政策研究所関西支所HP)
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議員の学校「公共施設は『消滅』するのか?~自治体の公共施設再編を考える~」(多摩住民自治研究所HP)
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by takashi_tanioka | 2014-07-04 20:00 | 公共施設再生 | Comments(0)

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