谷岡隆(たにおかたかし) 習志野市議会議員

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2018年 06月 15日 ( 1 )

映画「マルクス・エンゲルス」を観ました。岩波ホールでの上映の最終日、駆け込みでした。今後も全国各地で上映されます。

千葉県内では、千葉市中央区のUSシネマ千葉劇場で6月30日から上映予定です。内容については、オフィシャルサイトをご覧ください。

カール・マルクス生誕200年記念の作品ですが、「西欧諸国でマルクスを主人公に描いた初の長編映画であった」(ラウル・ペック監督)というのは意外でした。言われてみれば、マルクスの伝記映画を観るのは初めてです。
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山林で枯れ枝を集めただけで窃盗犯として撲殺・惨殺される場面、communis(ラテン語「共有・共同」)とは正反対の情景から始まり、「万国のプロレタリア(労働者)、団結せよ!」で締めくくられる「共産党宣言(共産主義者の宣言)」をマルクスとエンゲルスが誕生させるまでの話です。

マルクスの伝記は、高校生のときに清水書院の小牧治「マルクス」を読んだのが初めてでした。その後、マルクス自身の著作も読みましたが、活字と挿絵だけでは、19世紀前半の西ヨーロッパをなかなかイメージできないでいました。

映像化されると、当時の労働者や工場労働、都市の状況、若きマルクスらと様々な思想家・活動家の交流と論争など、イメージしやすくなります。どこまでが史実で、どこからがフィクションなのか、よくわからない部分はありますが、興味深い映画でした。

原題は、フランス語で「Le jeune Karl Marx」。ドイツ語では「Der junge Karl Marx」、英語では「The Young Karl Marx」でした。中国語版のタイトルをみると「馬克思 時代青年」でした。

日本語に直訳すると「青年マルクス」といったところでしょうか。どの国のポスターをみてもマルクスが前面に押し出されていました。

ところが、日本の邦題は「マルクス・エンゲルス」。ポスターも、カール・マルクスがフリードリヒ・エンゲルスやイェニー・マルクスと並列的に描かれています。これは、映画を観て納得しました。

社会主義・共産主義の権威となる前の青年期のカール・マルクスとフリードリヒ・エンゲルス。それに、理知的な貴族出身のイェニ―・マルクス、正義感の強い労働者のメアリー・バーンズが加わり、社会変革をめざす20~30歳代の4人の青年たちが登場します。

そのなかで中心的に描かれているのがカール・マルクスとフリードリヒ・エンゲルスですから、邦題の「マルクス・エンゲルス」の方が内容に合っています。より正確に言えば「青年マルクス・エンゲルス」でしょう。

4人の青年たちが互いに影響を与え合いながら活動していきます。もしマルクスの一生を英雄的に扱っただけの伝記映画なら、つまらない内容になったかも知れません。

ペック監督は「若者のために制作」したと言います。日本の左翼運動で弱まった「若さ」を感じさせる、刺激的で躍動感ある作品です。
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マルクスとエンゲルスを「若き革命家」として描く、この映画の魅力について、4月27日付の「しんぶん赤旗(日刊)」に谷本諭さん(党経済・社会保障政策委員会副責任者)の評論が掲載されていました。→下に転載

私がもう一つの魅力と感じるのが、当時の社会主義・共産主義運動の多様性を描いたところでした。

その一つ目が、社会主義・共産主義運動の国際性(international)を描いたことです。様々な民族に属する思想家・活動家の間で、ドイツ語、フランス語、英語・・・と、複数の言語で議論が交わされます。

19世紀前半は、国民国家が形成されていく時期です。無国籍者となったドイツ人マルクスが、共産主義者同盟のブリュッセル支部(ベルギー)で活動する時期=「共産党宣言」を誕生させる1848年まで映画で描かれます。

その後、国民国家が確立していくと、このような活動スタイルは難しくなります。たとえば、現在の日本共産党の規約の場合、日本国籍を取得しないと入党が認められません。

様々な民族・文化に属する人達が国境に縛られない運動を展開しようとするのは魅力的です。

二つ目が、思想家・活動家の間のリスペクトと論争が共存する場面です。映画の登場人物をみると、最終的には論敵となり決別する人物もいますが、多種多様な人達が交流と激論をへて思想・運動を発展させていく世界は、学ぶものがあると思います。「考えが異なると口もきかない」では、思想・運動は発展しません。

激しい論争で論敵を追い込んでいくマルクスやエンゲルスの姿は魅力的ですが、大衆的に人気があり包含力のある政治家として描かれるプルードンの姿も引き付けられます。大学教育を受けたインテリ青年マルクスに対し、職人出身で人生経験を積んだプルードンには、相応の人間的魅力があったでしょう。

年長のプルードンらを容赦なく論駁するマルクスとエンゲルスに「若さ」を感じます。「民主的な独裁者」と揶揄されることもあるマルクスの政治手法も描かれていました。変革期には、そういうやり方が求められる局面もあると思います。
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青年期のマルクスのスラヴ民族への偏見が垣間見られる場面もありました。もしかしたら、非西欧系の民族(アフリカ系)であるペック監督が意識的に入れたのかも知れません。

マルクス夫妻は完璧な人間ではなく、人間的弱さもあれば、「嫌な奴だ」と感じる場面もあります。養育や家計に悩むカールの姿もあります。いろいろな見方ができる映画です。

いろいろと書き連ねてきましたが、人間くさく、聖人でなければ権威者でもない、青年期のマルクスと仲間たちが、社会の不正と矛盾に怒り、情熱をもって変革しようとする姿は凄いと思いました。

さらに、彼らの凄いところは、その後、青年期を過ぎたとき、「あの頃は若かった」とならず、社会変革を一生の仕事にしたことでしょう。

革命家、そして一人の人間としてのマルクスら青年たちを描いた作品。20~40歳代の人達にお勧めしたい映画です。

4月27日付の「しんぶん赤旗(日刊)」より
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谷本諭さんの論文、特に国民健康保険や介護保険など社会保障制度の問題点と改善策をまとめた「議会と自治体」掲載の論文はいつも参考にさせてもらっています。現実政治の課題解決と、古典の世界の両方に通じた研究者であり、感心します。

by takashi_tanioka | 2018-06-15 23:30 | 社会科学研究 | Comments(0)

日本共産党市議としての活動日誌をメインに、日々の思い、家族のこと、研究活動などをご紹介します。


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